「注染手ぬぐい」の特徴
注染とは、染料を生地に「注」いで「染」める技法です。 何層にも折り重ねた生地に、細い注ぎ口を持つ専用のやかんを使用して染料を注 ぎ込みます。注がれた染料は生地の下からコンプレッサーによって吸引され、各層の生地を糸一本一本まで染め上げます。 ちがった色や水を同時に注ぐことによって、色のまじわりや、ぼかしをつくることができ、それが仕上がり品のやわらかな印象をつくりだしています。
安価な手ぬぐいで多く出回っているシルクスクリーンと、注染手ぬぐいの大きな違いは、吸水性と通気性の良さです。繊維一本一本に染料がしみこみ染め上げられるため、糸と糸の間を空気が通り、織物自身が本来持っている通気性を損なうことなく柄を表現することができます。
「浜松注染そめ」の成り立ち
浜松では、明治20年代より手拭いの染めの方法として「注染そめ」が使われていましたが、大正時代にこれを浴衣染めにも使い始めました。大正初期、関西より久保米吉が浜松にやってきて、尾張町で手拭いや浴衣を染め始めたのが、浜松注染業の最初と言われています。
染色加工には染料や糊を洗い流す大量の水と、反物を乾かす風が必要となりますが、浜松には豊富な地下水と天竜川・馬込川等の河川があり、また“遠州の空っ風”と呼ばれるが風が年間を通じて吹いていて、注染そめには非常に適していました。
このような好立地条件と、紡績業で活気のあった土地柄が関東大震災で職場を失った東京の職人や関西からも職人を呼び込み、浜松は注染そめの一大産地となっていきます。
注染そめができ上がるまで
注染そめの工程は大きく次の8つの工程に分かれています。
(1) 型作り (2) 晒・地染 (3) 地巻 (4) 糊置き (5) 注染 (6) 水洗い (7) 乾燥 (8) 仕上げ
(1) 型作り
型となる紙に彫刻刀で図柄や文様を彫り抜きます。型紙作成は、主に三重県の伊勢や鈴鹿の型紙職人に依頼しています。注染では型紙を木枠に固定するため、手作業で型を写し取る通常の型染めに比べて大きな型紙を使います。そのため、絵柄を大きく自由に構成することができます。
(2) 晒・地染
染めに用いられる木綿の白生地は、高圧精錬釜で生地に含まれる不純物を取り除き、漂白剤で白くします。この作業を「晒(さらし)」といい、専門の業者が行ないます。現在、白生地は愛知県の知多産のものを中心に使っています。生地全体染める場合は、絵柄を染める前に下地染を行います。
(3) 地巻き
布のしわを伸ばし、布の両端を揃えながら円筒状に巻き上げます。
(4) 糊置き
布に型紙をのせ、糊をへらで塗って絵柄を生地に写していきます。糊が付いたところは染料が染み込まないので、この糊のことを防染糊と呼んでいます。糊は、粘土・もち粉・海藻などで作られます。糊置きをして布を折り返し、糊置きした布を重ねてゆくという作業を繰り返します。
(5) 注染
糊置きした布を注染台に乗せ、“ヤカン”と呼ばれる道具で染料を注ぎ込んでゆきます。注ぎ込まれた染料を下から真空ポンプで吸引し、染料が生地を貫通して染み込むようにします。
これを上下ひっくり返して、もう一度繰り返します。こうすることにより、布の裏表に同一色彩と濃さで柄が描かれます。染料と水の入った“ヤカン”を両手に持って、微妙に加減しながらぼかしを染める高度な技も注染そめの独特な風合いに欠かせません。
(6) 水洗い
染め上がった布を水洗槽に入れ、水洗機および手作業で余分な染料と糊を洗い落とします。
(7) 乾燥
水洗いした布を脱水機にかけた後、干し場の天井から布を垂らす“ダラ干し”と呼ばれる方法で自然乾燥させます。
(8) 仕上げ
仕上げ糊を糊付けして乾燥させた後、一反ずつ両端を揃えて巻き上げ、商標などを取りつけて反物に仕上げます。
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